平成25年度FJC総会 レポート

特別講演II

「地域包括ケア時代の福祉用具事業」 ~スキルアップと専門性~

東畠弘子 氏
国際医療福祉大学大学院准教授、社会福祉士、ふくせん理事
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[東畠弘子(ひがしはた・ひろこ)氏プロフィール]

●日本社会事業大学大学院修士課程、国際医療福祉大学大学院博士課程、日本社会事業大学社会事業研究所研究員などを経て、2011年国際医療福祉大学大学院講師、2012年より現職。介護保険制度と福祉用具利用をテーマに研究し、福祉用具サービス計画書開発に従事。2007年より厚生労働省「福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会」委員。「明解! 福祉用具サービス計画の手引き」など著書多数。

介護保険の福祉用具サービスは、“量”から“質”の時代へ

「福祉用具の日」は、2002年に福祉用具法の施行日10月1日(1993年)にちなんで創設されました。以後、関係団体が啓発活動を行い、周知に努めています。

介護保険制度開始当時、福祉用具貸与サービスの給付総額は約4億円でしたが、現在では約210億円にまで増加しています。利用者数も要支援が26万7,000人、要介護が131万1,000人です(介護給付費実態調査2013年6月分)。在宅サービスのうち、要介護1~5までの方の介護給付に限れば、福祉用具貸与の利用は、通所や訪問介護よりも多い。特に手すりが急増しています。2005年の制度改正で、要支援・要介護1の方のベッド・車いす利用が介護保険の適用外になり、一度は数が減少したものの、再び増えてきたということは、やはり例外規定を用いてでも現場でニーズがあるという一つの証でしょう。

実際、現在進められている社会保障審議会介護保険部会での議論においても、今までになく福祉用具や住宅改修についての論点が複数あがっています。

以下に論点を整理しますと、

(1)福祉用具専門相談員の質の確保について

  • 福祉用具専門相談員の要件からホームヘルパー2級を外し、国家資格者および指定講習修了者に限ってはどうか。
  • すでに従事している福祉用具専門相談員については、知識習得および能力向上に努めるべく何らかの研修等を設けることを検討してはどうか。
  • 現在、事業所に配置されている福祉用具専門相談員のうち1人を、より専門的知識および経験を有する上位者として促進していくことを検討してはどうか。

(2)複数の福祉用具を貸与する場合において、効率化・適正化の観点から利用料の減額を認めることを検討してはどうか。

(3)福祉用具貸与のみの簡素なケースのケアプランについては、ケアマネジャーによるモニタリングのあり方を見直してはどうか(福祉用具専門相談員に任せてはどうか)。

以上のようなことが議論されています。これらは、ポジティブに考えれば、福祉用具専門相談員の専門性が認められるようになったと捉えられるのではないかと思っています。

2000年の介護保険制度施行時は、まずは供給の徹底に重点が置かれました。それはまさに“量”の整備の問題でした。以後、徐々に福祉用具の利用は広がり、重要性の周知も進み、前回の改定では、「サービス計画書の義務化」が決まるなど、状態像に合った利用が重視されるようになりました。つまり、福祉用具サービスも“量”から“質”が問われる時代へと転換したというわけです。

地域包括ケアにおける福祉用具・住宅改修の重要性

2025年を目指して現在、整備が進められている地域包括ケアシステムとは何かというと、要するに「地域で最期までずっと暮らしていこう」ということです。この考え方のベースにあるものは“住まい”です。住まいには、自宅に限らず、サービス付高齢者住宅や有料老人ホーム、ケアハウスなどいろいろな形態が考えられますが、医療機関や介護保険施設ではありません。

訪問看護、訪問リハビリテーション、24時間随時対応・定期巡回型サービス…いろいろ重要なサービスはありますが、地域包括ケアの拠点は、まずは住宅なのです。住環境整備が大前提です。しかし、残念ながら、住環境整備で必要とされる住宅改修や福祉用具といった細かいテーマはまだ地域包括ケアシステム整備の議論において、あまり表に出てきていないのが現状です。

現在、福祉用具サービスを利用する高齢者の中で、最も多いのは平均要介護度2.5の方です。しかし今後、後期高齢者が増加し、独居や認知症の問題が今以上に深刻化していく中で、利用者の平均要介護度は必ずや重度化していくはずです。そうしたときに、これまでのように「家族の見守り、操作説明を前提とした使用」に頼った、パターン化した提供ではニーズに応えられなくなるでしょう。

これからは、福祉用具を提供する側にも、より専門性のある知識が必要となります。利用者の状態把握と目標設定、豊富な商品知識からの選定、多職種と連携するためのプレゼンテーション能力などが必要となってきます。地域包括ケアシステムにおける福祉用具の重要性を周知していくためにも、福祉用具専門相談員からの視点による、福祉用具のプロだからこその意見・提案を積極的に発信していくことが求められるのではないでしょうか。

福祉用具専門相談員のスキルアップへの道

熱心な福祉用具専門相談員の皆さんは、皆、さまざまな方法で日々、自己研鑽なさっていることと思いますが、「自分がスキルアップしているかどうかの客観的判断がわからない」という声もよく耳にします。キャリアアップの仕組み、外部評価のシステムがないために、到達点がわからなくなってしまうのです。

そんな中で、スキルアップへの道として、ランキングテストは自己到達点やスキルアップを外部評価してもらう仕組みとして非常に優れています。競争やランク付けが避けられる時代ですが、いくつになってもテストで高得点を取るのは嬉しく、達成感があります。このランキングテストの結果は、ポイント制度とともに、非常にわかりやすいため、将来、福祉用具専門相談員の上位資格を創設する際の目安としてもいいのではないか、と個人的には思っています。

ちなみに、公益財団法人テクノエイド協会では、福祉用具プランナーの上級的位置づけとして、福祉用具プランナー管理指導者のための養成研修を実施していますが、参加者はさまざまな専門項目を受講しなければなりません。これは福祉用具のゼネラリストを養成するためのもので、見方によっては、福祉用具という分野に関する深い知識や専門的な技術をもち、この分野に特化して仕事をするスペシャリストとも言えるかもしれません。

福祉用具事業の評価については、指定基準の198条の3に「指定福祉用具貸与事業者は自らその提供する指定福祉用具貸与の質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない」とありますが、具体的な評価基準や項目がないため、実際になされているかどうかは不明です。特に罰則規定もありません。しかし、福祉用具というものは、製品が同じであれば品質は同じですが、利用に関する相談・選定・モニタリングは人によって差異が出ます。そこで、滋賀県では今年度、自己評価項目を作成する委員会を立ち上げました。私が委員長として参加させていただいているのですが、これは、日本福祉用具供給協会の滋賀県ブロックに県が委託をした非常に珍しいケースです。

つまり、利用者はいったい福祉用具で何を解決したいのだろう? ということを、福祉用具専門相談員の方に考えていただきたいのです。単に製品説明をするのだけではなく、個人の状態像を把握したうえで用具の選定、使い方を説明してほしい。また、これはメーカーの方にもお願いしたいことですが、製品説明の際に、メリットだけを伝えるのではなく、デメリットや好ましくない使われ方のことも説明していただきたいと思います。

本日、このあと福祉用具専門相談員実力ランキングテストの総合ランキング上位者の方の表彰式がありますが、上位者の方々には、これからの福祉用具専門相談員の質の向上を牽引すべく、さらなる高みを目指して頑張っていただきたいと思います。