平成26年度FJC総会 レポート

記念講演会

「介護保険制度における住宅改修・福祉用具の動向について」

厚生労働省老健局振興課 福祉用具・住宅改修指導官
東 祐二 氏
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今後の介護保険をとりまく状況

65歳以上の高齢者数は、2012年現在で3,058万人ですが、2025年には3,658万人、2042年にはピークを迎え、3,878万人に上ることが予測されます。75歳以上高齢者の全人口に占める割合は2012年現在で11.8%ですが、2055年には25%を超える見込みです。また、65歳以上高齢者のうち、「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の高齢者の増加や、世帯主が65歳以上の単独世帯および夫婦のみの世帯の増加が見込まれます。75歳以上人口は都市部で急速に増加し、もともと高齢者人口の多い地方でも緩やかに増加します。各地域の高齢化の状況は異なるため、各地域の特性に応じた対応が必要になってきます。

介護保険制度は2000年に創設され、10年あまりで費用が2倍以上に伸びています。今後増加する高齢者に対応するため、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、「地域包括ケアシステム」の構築への取組みがはじまっています。地域包括ケアシステムとは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供されるシステムです。なかでも重視されているのが、医療と介護の連携です。地域包括ケアシステムの構築に向けて、現在、介護や医療を中心に制度や法律の整備が進められています。

また、重労働である介護を担う人の健康を守るための施策も進められています。腰痛は介護職員にもっとも多くみられる健康問題です。平成25年6月に腰痛予防対策指針が改訂され、福祉用具を積極的に使用することが規定されています。たとえば、全介助の対象者にはリフト等を積極的に使用し、原則として人力による抱上げは行わせないこと、といった具体的な指導内容が定められています。

スライド:「福祉用具の活用による腰痛予防」~製品化されている様々なリフト、新たなリフトの形

在宅生活を支える福祉機器・住環境整備

老化や病気による心身機能の低下により、これまでできていた家事や余暇活動がやりにくくなってきます。「高齢になること」とは生活を送る上で課題や目標の再構築が求められる時期です。再構築がうまくいかないと、したいことがあってもあきらめてしまう、時間はたくさんあっても何をしてよいかわからない。することがないので身体を動かさなくなり、足の力が弱くなってくる。すると、だんだん外出しなくなる。そして、ますます体力が低下していく、という悪循環に陥ってしまいます。

こうした悪循環に陥らないよう、その方の生きる力を見いだし、自立を支えることができるかが重要なポイントです。本人の現存能力や潜在能力を最大限に活かし、ADLやIADLといった生活行為の向上を図るためのサービスを提供できるかが我々には問われています。そのためには、本人の「できること」「できないこと」「できそうなこと」などを見極めて、「できそうなこと」については可能性を十分に引き出す検討をする必要があります。高齢者が自らの能力を最大限発揮して「できそうなこと」を実現するためには、動作の工夫や福祉用具等の利用による生活環境の改善が有効です。福祉機器等の活用と住環境の整備に人的な支援によるサポートを組み合わせることで、より効果的な自立支援につなげることができます。

では、介護保険における福祉機器等や住環境整備に関するサービスを見ていきます。介護保険では、福祉用具のレンタルや販売、また住宅改修を保険給付サービスとして提供しています。まず、住宅改修については、年間の給付費が408億円(平成23年度)となっており、その4分の3が要介護度2以下の方への給付となっています。厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会(平成25年12月20日)には、「住宅改修を行う事業者に対する指導が難しい、事業者により技術・施工水準のバラツキが大きいという実態を踏まえ、住宅改修の質を担保する観点から、市町村が、あらかじめ事業者の登録を行ったうえで住宅改修費を支給するしくみを導入できるようにする必要がある」との意見が出されました。こうした意見を踏まえて、改修事業者の質の確保に関する仕組みの検討がなされています。

次に福祉用具ですが、介護保険の福祉用具貸与費(予防給付を含む)は平成23年度で約2,241億円となっています。請求事業者数は6,707件、1事業所あたりの平均費用額は267万円(平成24年度)となっています。最近の動きとしては、平成26年1月16日に開催された「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」において、複合的機能を有する福祉用具について、特に保険対象になる機能と対象にならない機能が混在している機器の取り扱いについて検討がはじまりました。

また福祉用具サービス計画は、平成24年度を経過措置期間とし、25年4月よりすべての利用者に対して計画作成が義務付けられました。このたび、「福祉用具サービス計画作成ガイドライン」が策定されましたので、ぜひ参考にしてください。ガイドラインでは、福祉用具サービス計画を作成する際の考え方や実施方法、また利用目標の達成状況の検証を中心としたモニタリングの考え方と実施方法などをわかりやすく解説しています。

スライド:「福祉用具サービス計画作成ガイドライン」

なお、福祉用具専門相談員の指定講習の見直しが行われていますが、このなかで、現行の40時間に10時間を加え、福祉用具サービス計画の作成に係る項目等を追加し、1時間程度の終了評価の仕組みを設けています。福祉用具専門相談員のサービスの質の向上が一層、求められるようになってきました。このほか、利用者への情報提供の一環として、今年の3月から福祉用具貸与価格情報をホームページ上(公益財団法人テクノエイド協会)で公開するしくみが運用開始となりました。

最後に、介護ロボットの開発についてお話します。平成25年度から日本再興戦略の「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」が実施され、経済産業省と厚生労働省が連携しながら介護ロボットの開発支援を進めています。現在、厚生労働省では、福祉用具・介護ロボット実用化支援事業に取り組んでいますが、介護ロボットの活用や開発等に関する相談窓口を開設したところ、234件に上る相談がありました。また、介護関連施設等から実証試験に協力するとして316件の登録をしていただきました。コミュニケーションロボットや移乗介助用ロボットなど、多くのロボット介護機器の開発への取組みが始まっています。

本日はどうもありがとうございました。