平成25年度FJC総会 レポート

記念講演会

「福祉用具専門相談員の研修ポイント制度について」

横浜市総合リハビリテーションセンター医療部 理学・作業療法課長
渡邉愼一 氏
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[渡邉愼一(わたなべ・しんいち)氏プロフィール]

●一般社団法人神奈川県作業療法士会会長、元・厚生労働省老健局振興課福祉用具・住宅改修指導官。福祉用具専門相談員研修用テキストの執筆に携わるほか著書も多数。一般社団法人日本作業療法士会制度対策部福祉用具対策委員長、厚生労働省福祉用具・住宅改修評価検討会委員、福祉住環境コーディネーター検定試験2・3級公式テキスト改訂委員会委員、一般社団法人全国福祉用具専門相談員協会理事等多数の職務を兼任。

本日は、全国福祉用具専門相談員協会(ふくせん)の理事としてお話します。ふくせんは福祉用具専門相談員が自らつくった団体です。福祉用具専門相談員は介護保険制度上、福祉用具の貸与や販売をするときに必要な職種として法律に位置付けられています。専門相談員と称するからにはその専門性をどうするのか、専門家であるならば自分たちで切磋琢磨することが必要だと、平成19年に協会を立ち上げて活動を始めたところです。研修ポイント制度はふくせんが平成24年度老人保健事業推進費等補助金・老人保健健康増進等事業として実施したものです。

福祉用具専門相談員に期待される専門性とキャリアパス

福祉用具専門相談員は40時間の研修を受ければだれでもなれます。厚生労働省は介護保険サービスの質を担保するために各サービスに人員基準や施設基準を定めています。制度設計のときに福祉用具サービスについてはレンタル制度を想定していたので、消毒や倉庫等の施設基準はできたのですが、福祉用具の専門性を有し、保険給付に必要な数が見込める専門家がいなかったのです。このため、40時間の講習による福祉用具専門相談員を人員基準としたのです。現在、貸与事業所は約7600事業所になりました。福祉用具専門相談員は1事業所に2名必置なので、1万5千人以上が働いていることになります。介護保険が始まってから15年が経過しましたので、現場では、福祉用具に関するノウハウが蓄積されてきました。現場の知の集積によりどんどん上がってきた福祉用具専門相談員の質をどう対外的に見せていき、利用者のサービスの選択を支援するのかを具体化したのが研修ポイント制度です。

研修ポイント制度を検討するにあたり、まずは活動の中で必要なもの、やれるもの、実現可能性のあるものだけをピックアップしました。専門性は何か、期待されるものは何か考え、次の5つを挙げました。

  1. 利用者の生活の個別性を踏まえ、福祉用具の活用に展開している。
  2. 福祉用具の支援プロセスに沿って、質の高いサービスを提供している。
  3. 多様な福祉用具に精通し、自立支援に資する用具の選定・適合を行っている。
  4. チームケアの一員として、利用者の自立・尊厳を支えている。
  5. 利用者やサービスの関係者と強い信頼関係を構築している。

これに対応して習得すべき知識・技術は何なのか。たとえば、利用者の生活・介護・医療に関する領域を知らなければなりません。こうした学ぶべき領域を5つ定めました。

  1. 職業倫理と社会制度に関する領域
  2. 利用者の生活・介護・医療に関する領域
  3. コミュニケーションに関する領域
  4. 福祉用具の選定と利用支援に関する領域
  5. 個別福祉用具の知識・技術に関する領域

次に、どのくらいの期間で知識・技術を習得するのか、福祉用具専門相談員のキャリアパスを考えました。新人、中堅、上級と成長段階を想定し、それぞれ研修と実務経験を考え、今回は研修ポイント制度なので、研修部分に着目しています。

図:「1.福祉用具専門相談員の養成の目標、(2)福祉用具専門相談員のキャリアパス」

研修ポイント制度の基本的な考え方

さて、福祉用具サービスの質の向上への期待が高まっていて、これには福祉用具専門相談員の職業能力開発が重要な要件となっています。言い換えれば、福祉用具専門相談員の専門性をアピールできないと福祉用具が保険対象からはずれるのではないかと危惧しています。介護保険の福祉用具は法律的には貸与(レンタル)・販売なので、物を貸す、あるいは売るだけでよくて、他の訪問介護、訪問看護といった人的サービスとは異なります。人的サービスが目立たないため、保険給付の効率化の議論では、価格が問題となりやすいのが特徴です。実際には、専門相談員がきちんと評価してモニタリングしてサービスを提供しなければサービスは成立しません。

それぞれの相談員が業務や研修を通じて専門性を高めていきますが、上級資格がないため、利用者や家族、介護支援専門員等に対して実践力を証明しにくい状況にあります。能力が高くても低くても同じに見られてしまいます。そこで、福祉用具専門相談員自身に加え、利用者や家族、介護支援専門員等にも理解してもらいながら職業能力開発の仕組みづくりを進めることが大切です。その解決手段として、研修ポイント制度により福祉用具専門相談員としてのキャリアパスやそれに基づく研修体系を発信し、研修に関する情報提供を行うことで、福祉用具専門相談員が専門職としてのキャリアを構築することを支援します。また、利用者や家族、介護支援専門員等に対して、福祉用具専門相談員の職業能力開発の過程を公表することで、福祉用具専門相談員の専門性に対する理解の促進、信頼感の醸成を図るとともに、サービス選択の判断材料の一つとして活用してもらうことが、制度のねらいです。介護保険は利用者がサービスを自由に選べますから、少しでもよい人を選んでいただいて、選ばれなかった人にはよくなりたいと思ってもらうことで、サービスの質が上がっていくというしくみです。

そこで、研修ポイント制度のコンセプトを次の4つにまとめました。

  1. 職種全体としての資質の向上を目指す。
  2. 専門職としての養成体系を構築する第一歩として、外部研修の受講履歴に着目する。
  3. ポイントへの換算によって多様な研修実施機関の研修を活用する。
  4. 研修ポイントを公開し、利用者・家族やケアマネジャーの判断材料として活用してもらう。

研修ポイント制度のしくみ

まず、参加要件は、介護保険制度上、福祉用具専門相談員としての資格を保持しており、業務に従事していること、また情報公開に同意することです。

福祉用具専門相談員の学習機会を整理すると、日常業務での学び、事業所内研修、外部研修、自己研鑚にまとめられますが、本制度の対象範囲は外部研修に限定しました。研修はインプットだけなので、正確には実力がわかりませんが、インプットをベースに評価するということです。

カリキュラムはさきほどの5領域の下に各6科目、計30科目で構成しています。専門相談員が学ぶべき領域と到達目標、研修に含むべき内容を整理できたことは財産だと思います。具体的には、ある研修機関の研修内容がどの科目に相当するかを換算して60分1ポイントとし、複数の科目を含む場合は2つを限度にポイントを按分します。対象は原則、介護保険制度の施行以降に実施された研修です。運営は全国福祉用具専門相談員協会が行います。研修実施機関の事前申請によりポイントを認定して公表します。受講するとその事実確認をしてポイントを加算して公開します。公開情報はウェブサイトでだれでも見ることができます。

図:「3.研修ポイント制度のしくみ (4)研修認証、研修ポイント認定の方法」
図:「4.ウェブサイトを活用した申請・管理・表示システム(2)表示システム (1)トップページ」

ただ、得意な分野はわざわざ研修を受けないこともあり、今後、相談員が自分でどう研修を受けていくか、それをどう公開するか、継続的な検討が必要だと考えています。相談員に実施したアンケート調査では、公開されるホームページの使い勝手やレイアウトは8~9割が「よい」と答え、活用方法として、スキルアップの目安にしたい、介護支援専門員に見てもらいたい、との答えが上位になっています。

現在、福祉用具専門相談員協会では、都道府県ごとにブロックを編成していて、現在30ブロックまで登録が進みました。このブロックを仲介して全国の研修情報を中央に流していただくしくみを構築しています。本年(2013年)7月上旬にブロック担当者会議、9月初旬に研修委員会を設立して認定方法などを公表し、10月1日に制度実施となる予定です。